小牧市民病院・病院事業管理者
日本病院会顧問
日本診療情報管理学会理事長

末永 裕之

この度、日本診療情報管理学会理事会の御推挙をいただき、 大井利夫名誉理事長の後任として私が理事長の重責を担うことになりました。 大井先生の長年にわたるご活躍、日本診療情報管理学会をここまでけん引してこられた見識と実行力を目の当たりにしてきた一人として、 果たして私がその任に堪えうるかどうか、内心忸怩たる思いもあります。

最近になって診療情報管理士が関与しなければならない領域が極めて拡大してきていること、 また診療情報管理士の認定者が3万人を超え、そして診療情報管理学会学術大会の内容が極めて充実して更に大きく成長を遂げてきた経緯を見るにつけ、 この勢いを伸ばして、方向性を誤らないように診療情報管理学会のかじ取りをしていかなければならないと、その責任の重さを痛感しています。

私が大井先生から伺った話の中で特に記憶に残っていることを記します。 電子カルテだけではなくICT全般において心しておかなければならない事です。 カナダではDRIP Syndrome、Data Rich Information Poor Syndromeと注意を喚起されているようですが、 屑のようなデータばかりで役に立たない、良い情報にならない症候群、たまるばかりのデータはあるものの、 なかなか良質な情報が少なく、電子カルテデータを現行の変革に利用しきれていない現状を実感することが多い中で、 今後共にICTを利用するうえで肝に銘じておくべきことと感じていました。

電子カルテになって、うまく利用できればいわゆるビッグデータとなり、今後に向けての改善策を見出す大きなツールとなります。 そのデータが正しいかどうか、重要なデータであるかを判断できるのが診療情報管理士の役割であり、 それらのデータをICT部門等と協働して分析し、そこから提供する医療の質、経営の質に関しての改革案を 病院の幹部に対して提言できる役割を担うことができるのも、診療情報管理士の役割であろうと考えています。 また、国が政策決定を行う上でこのビッグデータを使うためには、データそのものの真正性が確保されなければなりません。

大井名誉理事長は第41回日本診療情報管理学会学術大会でのご講演「10年間の回顧と反省」の中で課題(反省)として、私共が今後進むべき道を示して頂いています。

・情報を知識、知恵に変換し得ているか  ・医療の質向上に寄与しえているか  ・情報を昇華し患者に還元し得ているか  ・診療情報管理学会として進むべき道が示されているか  ・そのための会員の英知と総意が結集されているか

DRIP Syndrome に陥らないような工夫も含めて、大井名誉理事長から提示して頂いた日本診療情報管理学会の課題の克服、 そして診療情報管理士のさらなるスキルアップを目指した教育制度のあり方、また人材育成を当初の中心テーマとして掲げてまいります。

新執行部の皆様と共に風通しの良い運営に努めてまいる所存ですが、多くの会員の皆様のご協力なくしては成り立ちません。 お気づきのことがありましたらいつでもご意見をお寄せください。今後共一層のご支援、ご協力をお願い申し上げ、理事長就任の挨拶に代えさせて頂きます。